私の母はわきがで辛い思いをしていた。子供の頃、お風呂から上がると決まって、ザラザラした白い粉をわきに付けていた。子供だった私はそれが何だかわからなく、いつも不思議に思いながら眺めていた。
ある日のこと、母は私にこう言った。
「あなたはおじいちゃんと同じ硬い耳くそで良かった」
「私は散々嫌な思いをしたから、女の子のあなたが耳くそ硬いとわかった時、ホッとしたの」
私はいつも耳かきで耳くそを取っていたのでそれが普通だと思い、綿棒が一体何の為にあるのかが全くわからなかった。
ある日、父が私の目の前で綿棒を使って耳をほじり、その時初めて綿棒の使い道がわかった。もちろん、今は綿棒が耳くそを取るだけのものではないことを知っているが、当時はわからなかったのだ。
わきが臭うのはみんな同じだ。私だって臭いと甘く考えていたらそうではなかった。友人や知り合いが夏になると洋服の脇の色が変わる。
「えっ?これがもしかしてわきが?」
耳くそが柔らかいかと聞くとみんな、柔らかいと答え、私はビックリした。
確かに、臭いも何故こんなに離れているのに臭ってくるんだろうと思ったことはある。でも、自分が気付かないだけで自分も臭わしているんだと思っていたのだ。
シャツの脇の色が変わり、落ちないのですぐに買い替えなくてはならないらしい。周りはクスクス笑うが、これは笑いごとではないと思った。きっと毎年夏が来るのが嫌だろう。
主人も大変苦労している。子供が生まれ、耳かきをすると二人とも硬い耳くそでホッとする。当時の母の気持ちがよくわかった。